加藤元浩『C.M.B.森羅博物館の事件目録』の「アサド」[おいしい読書010]
物語の中に出てくる「おいしいもの」。食べたことがあるものも気になるけど、食べたことがないものは同じくらい、いやもっと? 気になってしまう
「智の守護者」たる資格を持つ、榊森羅少年が学園祭の模擬店で出すべく提案した「アサド」なる食べ物。見たことも聞いたこともなかったから、ものすごく気になる
C.M.B.森羅博物館の事件目録
加藤元浩さんが描くミステリシリーズの1作『C.M.B.森羅博物館の事件目録』全45巻
理系の主人公がミステリに挑むシリーズ『Q.E.D. 証明終了』の姉妹シリーズで、『Q.E.D.』の主人公・燈馬想のいとこで、考古学を専門とする榊森羅が主人公。なのでこちらはいくらか文系… なのかな? 文化人類学や歴史、生物などの話が多い印象。
森羅のスペックはこんな感じ
日常生活を営むための常識は欠けているが、雑学や博学知識にかけては天下一品。社会科は歴史以外まるでダメで、国語は高校生レベルだが、英語は完璧なイギリス英語を操り、英語以外にもラテン語など5ヶ国語を扱える。数学、化学、物理の知識は大学レベルで、歴史、地学、生物に関してはそれ以上の知識を持つ。
若き智のスーパーマンと、運動神経のずば抜けた女性とのバディ物という大きな枠組みは同じ。だけど内容はかなり違う。自分は文系だからか、なんとなくこちらのシリーズのほうに親しみを持っている。
どちらも1話完結。ミステリ好きさんには熱烈にオススメしたい作品。
謎の料理「アサド」
アサドが出てくるのは13巻。その名も「アサド」というお話。
森羅たちが、学園祭で出す模擬店について悩んでいるところからスタート。
なかなかいい商材が思いつかない。条件は「衛生上加熱し続けられる食べ物」で、望まれるのは「できるだけいい匂いがする」「外国の珍しい料理」。そこで提案したのが「アサド」というわけ。
「アサド」って聞いて、最初に思い浮かんだのが「モサド」。イスラエル諜報特務庁の通称なんだけど、もちろんそれとは関係ない。シリアの政治家の名前はそのまま「アサド」だけど… もちろんそれとも関係ない
アサドって何?
「アサド」もしくは「アサード」とは、スペイン語で「焼かれたもの」を意味する言葉であり、料理の名前。パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、チリなどで食べられる、焼肉料理のことらしい
『C.M.B.』では「アルゼンチンの牧童が肉を焼いた料理」と紹介され、「3時間以上かけてゆっくり焼く」とされる。
大きな肉の塊を、とにかくゆっくり、じっくり焼くのがコツ… というか、それで全部。
焼けた肉には「チミチュリソース」なるソースをかける。また知らないモノが出てきた。
これは、パセリとニンニクのみじん切りを、塩と油と酢で和えて、さらに香辛料を加えたソースなんだそう。
じっくり焼いた肉に、このソース。絶対旨い。けど3時間…
アサドをめぐる謎が
ミステリ漫画なので、当然謎が発生する
学園祭の前日、予行演習として「アサド」を焼く森羅たち。他にも参加しないといけない用事もあるため、3組に別れ、1時間ずつ肉の番をすることになる
いい匂いをさせながら肉を焼く主人公たちに、他クラス、他部活の生徒も興味津々。「一口ほしい」だの、「学園祭当日は1人前食べさせろ」だのといいつつ関わってくる
そしてちょっと目を話したすきに… なぜか焼ける寸前の「アサド」が消えてしまう。犯人は誰か? そして…
結局味の話はないけど
肉は発見されるものの、主人公たちの口には入らず
結局「アサド」を食べた描写はゼロ。
おいしいに決まってるけど、決まってるんだけど… でもやっぱその感想は見たかった気がする
そして「アサド」。食べる機会はあるのだろうか?